- 針で刺すような痛みは肩こりではない
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左の肩が針で刺すように痛くて
体もふらふらだし目も見えにくい
どこの病院へ行けばいいのか
分からないがとにかく肩の痛みが
我慢できなくて
と来院された患者さんだ
見ると赤黒い顔で歩くのも辛そうに
伝い歩きしそうに頼りない歩行で
ベッドへ移動している
血圧は162/95と降圧剤を服用している
わりには高い、SPO₂97％と
それほど異常とは言えないが
呼吸が激しく足の浮腫みがひどい
聞くと6日前に自宅で立ち上がれなくなり
まる1日まったく動く事ができなくて
2日目にやっと動くことができたそうだ
この事から鍼灸治療は無理と判断し
循環器科のある病院へ行くように
指導した
6日前に動けなかったのは
恐らく一過性の脳虚血発作（TIA）で
今日の状態は顔色や呼吸、足も浮腫みから
左肩の肩こりと本人は思っているが
心筋梗塞の痛みではないかと推測したからだ
心筋梗塞といえば胸が痛むイメージだが
左の背中や首すじにひどい痛みが走る
ケースもめずらしくない
また
肩から背中の痛みにもいろいろあり
特に針で刺すような激痛の場合は
大動脈解離といった血管が裂ける
疾患も十分考えられる
そのような状態で鍼灸治療を行うと
血行が良くなり過ぎて血管が破裂して
その場で絶命する可能性もある
患者さんは頭や首の痛みや
肩の周囲の痛み全般を肩こりと
大雑把に考えている方が多いが
肩こりは日本語特有のものであり
肩や首が重だるい不快感であり
痛みを伴うものは肩こりではないのだ
しかも
肩を動かしたり揉んだりして
痛みを感じるケースは筋肉や
関節の炎症が疑われるので
鍼灸治療で治療できるが
今回のように何もせずに寝ている時でも
針で刺すような痛みを感じるケースは
内臓痛を疑わなければならないのだ
この患者さんはたまたま当院の
近隣に住む方だったのでとりあえず
当院に来られたことが幸いしたが
もしも町のマッサージ店に行って
「肩こりがひどいから良く揉んで」などと
言っていたらとんでもない事だった
とにかく針で刺すような痛みは
肩こりでは無い事を肝に銘じましょう。
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